染色体検査の結果に、見慣れない結果とともに「正常変異と思われます。」というコメントが付いてくることがあります。これは、正常異型とか多型などと呼ばれることもあります。 その名のとおり、一般に症状を呈さず、妊娠、子孫への影響もないと考えられているものです。一人ひとりの顔が違うように、染色体にも見た目の個性があるわけです。 染色体は1個の細胞に46本あり、そのうちの2本は、性染色体と呼ばれX染色体が2本(女性の場合)あるいはX染色体1本とY染色体1本(男性の場合)あります。染色体の検査法には様々なものがありますが、普通はGバンド法という方法で検査されます。染色体の数だけでなく、部分的な異常を検出するにはGバンド法で染色体の縞模様を見ていくのですが、遺伝子がない部分などの長さが変わったり、一部が入れ替わったりしていても、ほとんど症状がないものが知られていて、それを正常変異と呼びます。 有名なものを以下に、書きますが、それ以外にも多数の正常異型と思われる核型(染色体結果)がありますが、比較的まれなものでは、症例数が少ないいために本当に正常と言ってしまっていいのか専門家でも悩むものも少なくありません。その場合は、さらに詳しい検査のために別の染色法を試みたり、ご両親の染色体を調べてみるのが一般的です。 inv(9)(p11q13) これは、逆位の一種ですが、最も有名なもので2%前後、つまり50人を検査すると約1人に検出されます。記号の意味は、9番染色体のくびれた部分を含んで一部分が逆になっていると言うことです。逆になるには2カ所が切れて入れ替わる必要がありますがその部分によって、正常変異とはいえないものもありますが、p11q13あるいはp11q12ならば正常変異です。男性不妊などいくつかの疾患にに関係するのではないかという報告もあるようですが、多くの専門家は正常と考えています。気にする必要はありません。 1qh+ 1番染色体の長腕のヘテロクロマチン領域が長いという意味です。ヘテロクロマチン領域は9番、16番など他の染色体にも何カ所かありますが、もともと遺伝子の働きが抑えられている領域ですので、そこが長かろうが短かろうが、問題はありません。 正常変異と言われて、不安や心配を持ち続けている方は、お近くの遺伝カウンセリング施設で相談されることをお勧めいたします。その際には、染色体の専門家である細胞遺伝学認定士が遺伝カウンセリングスタッフにいるかどうかを確認されるとより安心だと思います。 このページを遺伝カウンセラーが見ておられるのでしたら、カウンセリングには、以下の書籍を手元に置かれることを、お勧めいたします。 Atlas of Human Chromosome Heteromorphisms 症状を呈さないいわゆる正常変異が数多く写真入りで解説されている貴重なアトラスです。 |